建築家だけど、サウナはデザインしすぎてない『プリミティブ』なところがいい 僕は建築家でもあるので、温泉宿を選ぶときには建築的な基準も大切にしていますが、サウナに関しては、あまりデザインが過剰なところは選びません。サウナはリラックスする場所なので、緊張感がある場所よりも、リラックスできる場所がいいと思っています。そのため、自分が好むサウナは、どんどんプリミティブなものになっています。例えば、コンロがIHになったり、ストーブが電気ストーブに変わったりして、火から遠ざけられていると感じることもありますし、木や森といった自然からも、ここ100年ほどでだいぶ遠ざけられていると感じます。ですので、火や木、森がより原始的な形で自然の中で感じられるサウナが好きです。また、サウナは湯治のようなものだと考えています。身体が元気になったり、心がリセットされる場所として、私にとっては非常に重要な存在です。サウナに温泉があるのはもちろん理想的で、さらに水風呂が天然水や地下水だと、さらに嬉しいですね。サウナーにとって、非常に大切な要素です。
【武雄温泉・御船山楽園ホテル】『らかんの湯』の巨大薪サウナでセルフロウリュウ


『御船山楽園ホテル』にある「らかんの湯」は、サウナシュランでも殿堂入りをしているサウナ愛好家からは有名な場所。みんながいいなと思うのも納得できます。男性ドライサウナには、焙煎・抽出したオリジナルの佐賀県嬉野市産ほうじ茶と、御船山の天然水を使ったセルフロウリュウが楽しめるサウナがあり、女性ドライサウナには、香り豊かなアロマボールと、御船山の天然水を使ったセルフロウリュウを体験できるドライサウナ、ミストサウナが揃います。翌朝は男女入れ替え制なので、両方楽しむことができるんです。2023年以降に、薬草スチームサウナと巨大な薪サウナが新設され、これからまだまだ進化していくのではないかと期待をしています。薪サウナ室は、同じ薪ストーブを共有する形で、壁を挟んで男女左右対称作られており、男女それぞれがセルフロウリュウを掛け合います。行動はお互いに見えませんが、ロウリュウがボワーっと飛んでくるその様子がなかなか面白いです。写真で見ると、人工的に作られたサウナかなと思っていたんですが、実際に行ってみると、その印象が裏切られ、自然の要素を取り入れたプリミティブな作りで驚きました!リノベーションされた新築っぽさも、レトロな部分も感じられ、印象とは全然違いました。外気浴スペースは屋外にあって、御船山の自然を感じながらリラックスできる時間は最高の癒しです。
【沼津倶楽部】建築美と美食と、庭園を望むサウナ


『沼津倶楽部』は、サウナもお風呂も素晴らしいですが、まず建築が本当に素晴らしいんです。 建築家の渡辺明さんによって敷地内に8部屋の集合別邸が増築されたんですが、その見どころが多数あります。まず建物の外壁が「版築(はんちく)」といって、土を建材に用いしめ固める作りになっていて、この伝統工法で作るという思想が素晴らしいです。また、全ての客室に水盤があるなど、歴史的なアート建築を活かしつつ、渡辺明さんのモダンな手法でリノベーションされています。レストラン『茶亭』は、有形文化財にもなっている建物。ミシュランも獲得しているモダンチャイニーズを楽しむことができます。料理と建築のコンビネーションが素晴らしいです。そして、サウナとお風呂は美しい庭園を望むことができ、洗練された和モダンな空間です。1階にはセルフロウリュウ付きが1室、2階には温度の異なる2室を併設していて、温まった体をリフレッシュできるリラクゼーションスペースも。極上の癒しを提供してくれます。
【御湯神指し(おんゆかみさし) ベストパワーランド】いのちのサウナ「來磊(らいらい)」で原始体験

まるで大きいピザ窯のような、麦飯石(ばくはんせき)を積み上げて作られたドーム構造のサウナの中には焚き火のような感じで、囲いもなく中央に炎があるんです。そこに麻袋を被って中へ入ると、10分くらい火のそばに寝かされます。中では目を開けていられないくらいの熱さで、袋越しから刺す光を細目でぼーっと見つめている時間が、「ここはどこなんだろう?」と思うほど、原始的な空間です。そのうち、炎と遠赤外線の効果で身体から汗が噴き出てきます。「ガンの余命宣告で3ヶ月と言われて、もう3年は通っています」という人もいて、湯治として来ている人もいました。“いのちのサウナ”と呼ばれているわけですね。取材でお伺いしましたが、プライベートでまたすぐ戻ってきたいなというふうに思っています。
2000年6月に開業。特許を持つ日本にただ1つしかない、麦飯石で作られたドームサウナがある。

【森のサウナ】森の中にポツンと佇む、プリミティブなサウナ体験を

僕が一番好きなサウナは、徳島にある『森のサウナ』です。オーナーはもともと東京で働いていたんですが、日本をいろいろ見て周り、移住を決意したんです。まずはレストランを始めようと物件を購入したのですが、裏の森まで一緒についてきたそうです。その森は、真っ暗で間伐しないと光が入らないほど、木が弱っていたんです。どうにかこの木を使って何かできないかと考えていた時に、サウナのアイディアが浮かんだそうです。要は、弱った木を見極めて適切に間伐して森に光を入れて、またその木を薪にし、灰を森に返すことで森が元気になるという仕組みなんです。サウナに入ることで、森が元気になるんですね。サウナ室は非常にプリミティブで、薬草を摘んでロウリュに使うんです。第2水風呂や第3水風呂など、名前がつけられた水風呂は、水がとてもきれいで、なんと飲めるくらいなんですよ。自然とのつながりを大切にしていて、ここに来ると本当に豊かな気持ちになります。午前の部と午後の部に分けた1日2組限定の貸切で、サウナだけの利用も可能ですし、1日1組さま限定で宿泊を楽しむこともできます。近くに温泉もありますよ。
人の手でサウナをつくり、森を回復する 徳島県神山町でカフェを営むオーナーと周囲の人達の手仕事によってつくられた森の中のサウナ小屋。1日2組限定のプライベートサウナ。

【天城湯ケ島温泉・おちあいろう】茶室サウナでサ道ならぬ茶道を感じたい


近いところで僕も行きたいなと思っているのが、創業140年の老舗旅館の『おちあいろう』です。和の風情とモダンな快適さが融合する名宿です。名建築と自然に囲まれた贅沢な空間で、サウナと源泉かけ流し温泉を堪能できるという場所なんです。サウナは、茶室をモチーフにしたサウナと狩野川を眺望する天狗サウナの趣が異なる2つのサウナが用意されているそうです。茶室サウナは名前の通り、茶室がモチーフになっていて、壁はガラス張り。まさに、サ道でなく茶道を連想できる感じです(笑)。最近よくある茶室サウナだけど、それのはしりになっています。2019年に全国の5000施設から「今行くべきサウナ11選」の1つとしてサウナシュランにもランクインするほどの実力です。歴史ある場所でリラックスすると、アイデアが涌いてくるような感覚になります。
【鶴岡北京田温泉・スイデンテラス】のどかな田園風景に囲まれて過ごすととのいタイム

『スイデンテラス』は建築家の坂(ばん)茂さんが設計を手掛けていて、田んぼの気配を感じるように作り出されているのが面白いです。サウナ室は全部で2種類あって、『天色の湯』では建築に合わせた六角形で統一されたデザイナーズサウナになっていて、サウナ室内からものどかな田んぼの風景を望むことができるそう。『月白の湯』では、坂さんの建築のアイコンでもある、紙管を模したベンチが特徴的で、窓の外には水盤が広がり、開放的な雰囲気の中でサウナを楽しめるそうです。フィットネスジムも完備されているので、運動後のサウナなんてさらに気持ちよさそうですね!『スイデンテラス』に隣接している児童教育施設のキッズドームソライでは、アスレチックや工作を楽しむこともできるので、子供も一緒に楽しめそうです。
鶴岡北京田温泉山形県
山形庄内の田園風景に立つ交流と滞在の拠点。木の温もりを感じられる館内はゆとりとくつろぎに満ちた自然体ですごせる空間。

【蓮台寺温泉・清流荘】重要文化財級、日本最古のケロサウナに会いに

『清流荘』にはフィンランド人のサウナ職人が来日して遺してくれた、日本最古のケロサウナがあります。「歴史と風格からも、日本にこれ以上のケロサウナは無いだろう」とサウナー達も口を揃えます。「ケロ」とは樹齢200年以上の松の木が立ち枯れたもので、何年もする間に木の香りが閉じ込められていくんです。だからやっぱり木の香りが全然違います。貴重な木材なので、宝石のように貴重という意味で“木の宝石”と呼ばれているんですが、最近は実際の木にそっくりに見せるプリント技術が高精度になってきて、サウナですらもプリント合板を使うことが多くなってきています。本物の「ケロ」を使用したフィンランド式本格薪焚きサウナの『清流荘』には、私も必ず足を運びたいと思っていますし、皆さんにもぜひ本物を感じてほしいと思います。
【登別温泉・登別グランドホテル】110度の鬼サウナで究極のサ活体験


北海道なのでまだ行けてないんですけど、『登別グランドホテル』の鬼をテーマにした『鬼サウナ』に行ってみたいと思っています。プロサウナー「ととのえ親方」こと松尾大さんが監修したという『鬼サウナ』は、ドライサウナの室温は平均80~100℃のところ、なんと110℃! さらに30分に1度のオートロウリュウ付きで、空気が熱くて、呼吸がしづらいくらい熱いそうです。でもそういうのも、たまには欲しくなるんですよね。挑戦してみたくなる。毎回は嫌だけどたまには。激辛みたいなのと一緒です(笑) 外気浴スペースには、ウッドデッキが設置され、北海道の自然を感じながら、滝の流れや水温に癒される開放的な空間を愉しむことができるそうですよ。
この記事の温泉地でおすすめの宿
鶴岡北京田温泉山形県
山形庄内の田園風景に立つ交流と滞在の拠点。木の温もりを感じられる館内はゆとりとくつろぎに満ちた自然体ですごせる空間。

ちょいズラし温泉に行くメリットは、そんなに混雑していない中でゆっくり温泉を楽しめること。静かな自然の中で良質な温泉を楽しむのは最高の贅沢ですよね。